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SPECIAL INTERVIEW
TOP特集記事 第2回 吉祥寺駅前ハモニカ横丁の火付け役、手塚一郎氏インタビュー
“ハモニカ横丁を変えた男、手塚一郎氏が飲食店をはじめたきっかけとは?”
吉祥寺の酒好き、いや東京の酒好きに知らぬものはいない存在となったハモニカ横丁。その活気に溢れた現在の姿からはまったく想像できないが、ほんの十数年前までは夜に営業している飲食店などほとんどないような薄暗い通りだったそうだ。

そんなハモニカ横丁を活性化させた火付け役と言うべき人物こそが、株式会社ビデオインフォメーションセンターの手塚一郎氏だ。ビデオデッキやテープを販売することを生業としていた手塚氏が、一体どんな流れでハモニカ横丁に飲食店を出す決意をし、今や13店舗を構えるまでに成長したのだろうか。
吉祥寺駅北口を出てすぐの場所にあるハモニカ横丁
吉祥寺駅北口を出てすぐの場所にあるハモニカ横丁
株式会社ビデオインフォメーションセンター代表取締役 手塚一郎氏
株式会社ビデオインフォメーションセンター代表取締役 手塚一郎氏

--手塚さんが当時はまったくの専門外だった飲食店を始めたきっかけとは、一体なんだったのでしょうか。

最初の店は1998年にオープンしました。今のハモニカキッチンがある場所でビデオ専門店をやっていましたが、そこの二階の倉庫がほとんど使われていなかったので、金・土・日だけ、仲間と遊びではじめたのがきっかけです。その頃のハモニカ横丁は、夜になると真っ暗の通りで、やっている飲み屋もほんの数軒。そんな真っ暗なところに、ポツンと白いものをおいたらおもしろいという感覚で白を基調としたきれいな店を出したら、女性客もたくさん来てくれるようになりました。

するとしばらくして、隣で魚屋をやっていた人から、もう店を畳むからここを借りないかと言われて、半年考えて、「フードラボ」という飲食も物販もやるトータルな食べ物のお店をやろうと。店の雰囲気はブレードランナーみたいにするといいなと思って、ブレードランナーといえば逆光と煙。焼き鳥屋をやれば煙が出るなと、一階は焼き鳥屋にしました。そうしたら焼き鳥屋だけがうまくいって物販はダメだったので、どんどん飲食を増やしていったという流れですね。

手塚氏がはじめて手がけた飲食店が、今も横丁にある「ハモニカキッチン」
手塚氏がはじめて手がけた飲食店が、今も横丁にある「ハモニカキッチン」

--ハモニカキッチンとフードラボの存在が、ハモニカ横丁全体の活性化につながった訳ですか?

非常にきれいな店だったので、ここでなにか新しいことが起きているなっていう印象は与えたでしょうね。「私もあんなところで店をやりたい!」っていう人が結構出てきました。そのあたりから、ビデオ業界が大量生産の時代にになってきて、商品があまり面白くない。また大きな家電量販店が増えてきて、あの規模で商売をやらないとダメになってきた。でも私がああいう店の売り場に立つ姿は想像できませんでした。そういうところに人生の後半を費やすのは向いてないなと。

--それでビデオの販売から飲食業へと主軸をシフトしていった訳ですね。ハモニカ横丁にある13店舗を、すべて別形態にしているというのは、なにか意図的なものでしょうか。

店はなるべく違うようにしています。ビジネス上はどうなんだっていう問題はありますけど、飽きっぽいんでしょうね。成功したから、じゃあこれと同じ店をもう一軒っていうのは面倒臭い。ダメなんだよね、また同じことを繰り返すっていうのが。なるべく新しい局面にいたい。だからいつもアマチュアなんですよ、初めてのことばかりしているから。

有名デザイナーが内装を手がけた、一風変わった焼き鳥屋「てっちゃん」
有名デザイナーが内装を手がけた、一風変わった焼き鳥屋「てっちゃん」

ここは戦後の闇市から生まれた横丁ですが、三丁目の夕日みたいな昭和レトロの懐かしさだけでは長続きせず、いずれ陳腐化してしまう。その部分は僕がやらなくても、横丁で長年やっている人がいるから任せて、それと対照的なものをやりたいなとずっと思っていました。

その頃の僕の敵は六本木ヒルズ。近代の開発は更地にしたまっさらな空間に、建築家が図面を引き、デベロッパーが店を決めるという、あたかも頭の中で街とか空間をつくったようなものです。それとは対極的に、ゼロにしてから作るのではなく、60年位かけてそこに存在している横丁と共存したい。そういう意味では、この横丁に極端にメジャーなものが欲しいんです。コム・デ・ギャルソンに2,3か月でも出店してもらえないかなぁ。

--確かに古いものと新しいものが共存することで、お互いが強調しあって魅力を生んでいるように感じました。

ハモニカ横丁の魅力は、簡単にわからないし、わかられたくないっていうのがあって、「あそこの店はいいな」って思っていくんだけれど、そこにいく理由が実はわからないのが人間。そういう人を相手にできるといいなって。子供から年寄りまで、日本人から外国人までが存在し、うまくコミュニケーションできないゴチャゴチャした感じを演出したかった。

--確かにこの横丁は店員もお客さんも、外国人が多いですね。

うちの店員は半分くらい外国人ですね。いろいろな国の人が集まってますよ。お客さんも、2020年の東京オリンピックが決まった影響か、外国人がすごく来るようになりました。こういう横丁って観光地として非常におもしろいんでしょうね。僕なんかも、スペインとかのうらぶれた通りにあるようなバルに入って、その街の人と飲んで、この国が少しわかったかなって思う。それと同じ感じなんでしょうね。

いろいろな国の言葉が飛び交う「モスクワ」や「ミュンヘン」
いろいろな国の言葉が飛び交う「モスクワ」や「ミュンヘン」

--最後になりますが、ハモニカ横丁でおすすめの楽しみ方を教えてください。

小さい店が多いので、一人か二人の少人数がいいですね。どの店も値段はだいたいこなれているので、気楽に来て飲んでください。設計図を基に計算された街ではなく、時代が作った混沌の迷宮を探検なので、最初はたいがい迷子になりますが。あと意外と知らない人が多いのですが、ハモニカキッチンなどは3階まであるんですよ。そこに上がって、上から横丁を眺めるのもいいですよ。

--六本木ヒルズの最上階から見る景色より、ハモニカ横丁の三階からの眺めの方が、確かに酒飲みには合っているかもしれませんね。今日はありがとうございました!

店名:グランキオスク
電話:0422-20-5979
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-33-10 丸二ビル2F
営業時間:12:00~20:00
■SAKABARU WEBサイトは「未成年飲酒防止」及び「適正飲酒」を奨励しています。