酒場街飲み路地裏探索

お店紹介ファイル
TOPお店紹介ファイルNo.012 自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
ボートで川を渡って行く酒場
京都の観光名所、嵐山。桂川に架かる渡月橋は、京都を代表する風景としてテレビなどでもよく目にする。「古都京都の文化財」として世界遺産に登録されている天龍寺もその裏手の竹林も素晴らしく、私も何度か訪れたことがある。修学旅行生の周遊先としてもメジャーで、昔は桂川沿いにタレントショップが立ち並んでいた。

その嵐山に一軒、以前から気になっているお店があった。嵐山には「京都吉兆」の本店があるぐらいで、懐石料理を出す高級店が多く、私が気軽に行けるように酒場はありそうにないのだが、その店は安心の大衆価格らしい。そして何よりすごいのが自分でボートを漕いで川を渡って行くことができる、という点である。

それらの情報も、ずいぶん前に書かれたブログ記事から得ただけで、本当にそんな店が存在するのか確信が持てぬまま、とりあえず来てみた。
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
川と山。いい景色だ
阪急電車の嵐山駅から渡月橋を渡り、川に沿って上流の方へ歩いて行く。しばらく歩くと、渡月橋付近の活気が嘘のように静かな雰囲気。ふと川岸に目をやると、手漕ぎボートが2艘停まっている。
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
これがひょっとして
岸に降りてみると、確かに今回私が目指す「琴ヶ瀬茶屋」の船のようだ。「琴ヶ瀬茶店」と赤い文字で書いてあるもんな。
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
向こう岸に見えるのが目的地のようです
どうやらこれで対岸まで行くっぽいのだが、いきなり勝手に漕ぎ出していいのか分からない。どうしたものかと考えていると、ちょうど対岸から売店船がやってきた。川下りの船に近づいて、「お飲み物やおつまみいかがですかー」と売りに来る船である。
「このボート、乗っていいんですか?」と声をかけてみると「いいですよー!」とのこと。わざわざ船から降りて地面に横たえてあった立札を立ててくれた。
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
乗っていいことが正式に確認された
いよいよこのボートに乗って漕ぎ出す時がきた。しかし困ったことに、私は手漕ぎボートを漕いだことがないのであった。本当に向こう岸までたどり着けるのだろうか……。おそるおそるボートに乗って地面を蹴るようにして川へ。で、えーと、と、座ってみてとりあえずオールに両手をかけるが何だか腕の位置が変で力が入らない。壊れたゼンマイ式のおもちゃのようにバチャバチャと弱々しく水面を叩くだけである。全然前に進まない。やべえ!まったく乗り方が分からない!死ぬかも!

すると先ほどの売店船が遠くから近づいてきて「逆!座る方向!逆!」と声をかけて下さった。手漕ぎボートって舳先に対して背を向けるように座るんですね!私は舳先の方を向いて座っていたのだった。どうりでオールを握る手の位置が変で力が入らないと思った。生存の危機を感じたために動悸が激しいが、なんとか気を取り直して漕ぐ。途中何枚か写真を撮ったが、この写真からも私の慌てぶりが伝わるだろう。
なんとか向こう岸にたどり着くと、お店の方が船を引っ張って停めてくれた。
胸をなでおろして見回してみると、
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
おや、
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
おや、おや?
夢のように素晴らしい店じゃないか!お客さんは私以外に一組いるぐらいで、大変静かである。メニューを見ると「中瓶 500円」とある。缶ビールが400円。チューハイレモンが300円。大きい公園なんかにある売店の価格という感じ。全然許容範囲である。
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
激安ではないけど安心価格です。
というか、目の前にバーンと川っていう状況、最高すぎる!
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
最高です!
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
うめぇー!
私の目の前では、お店の方が釣糸を垂れている。そののんびりした様子を眺めていると、心がどんどん落ち着いてきた。改めてもう一枚。
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
乗ってきた船と。
おでんや焼きそば、天ぷらや鮎の塩焼きなど、そそるおつまみメニューの中からこれしかないと思って頼んだのがこちら!
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
そうめん(600円)
ずずっとすすると、当然ながらうまいー!ボートを漕いで汗をかいたところにすーっと染み渡るうまさである。ずっと川面を見て、思い出したようにビールを飲んで、たまにそうめんをすする。至福のひととき。もう一つ頼んでいたつまみが運ばれてきた。
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
イカ焼き(400円)
焦げたタレの香りにビールが進む。ちなみにお店の屋台部分はこんな感じ。
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
こんな店で働きたい。
飲み物は山の上から流れてくる水で冷やされている。
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
水の音が耳に涼しい。
いつしかお客さんは私ひとりだけになっている。お店の方同士の会話をぼーっと聞く。

「見てみ、あの鳥、さっきから10分もあそこにとまったままで動かへん」

「あら、ほんまに。親鳥がエサとってくるのでも待ってるんやろうか」

「そうかもわからんな。ずっとあそこにいるわ」

「居眠りしてるんかな。ワッとおどかそか」

「あはは」

お店の方はずいぶん長い間釣糸を垂らしているが、一向に釣れない様子である。

「いやー、釣れんなあー」

「イワナが跳ねてるところまで行って釣らな」

「そやなー。あ、親鳥きた!親鳥」

「ああ、ほんまや。やっぱりエサを待っとったんや。可愛いなあ」

終始こんな感じ。のんびりと、魚や鳥の話をしている。トンビが飛んでくるとエサをあげてやり、そのエサを目当てにアオサギが飛んでくると「お前にあげたんとちゃう!しゃーないなー。ほれ」とエサを投げる。そして私はそれを見て飲んでいるだけ。

気付けばかなりの時間が経っていた。お会計をお願いした際にお店の方と少しお話しすると、「ここ、落ち着きますやろ。この店は昔から変わりばえしません。ここまで来ると人もいないし、鳥やらなんやらきますし、それ見てたら楽しいんです」とのこと。ますますこんなお店で働きたいと思った。

帰りは歩いて帰る。今更だがこのお店、ボートに乗らずとも、お店のある側の川岸を歩いても行くことができる。ボートを漕ぐのが面倒な方はぜひ歩いて行ってみて欲しい。渡月橋まではほんの少しの距離だが、空気がひんやりして気持ち良い道である。
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
こんな道
琴ヶ瀬茶屋、絶対また来よう!そして今度はもっとゆっくり飲み食いしながらのんびり過ごそう。
自分でボートを漕いでいく京都・嵐山の絶景酒場
帰りに振り返った琴ヶ瀬茶屋
店名:琴ケ瀬茶屋
営業時間:9:00~18:00
定休日:不定休
住所:京都府京都市西京区嵐山元禄山町
アクセス:嵐電嵐山、阪急嵐山駅から徒歩10分
電話: 075-871-5069
  • スズキナオ

    スズキナオ
  • 大阪在住。テクノラップバンド・チミドロのトラックメイカーとして活動している他、細々とライター業をしております。趣味は住宅街を徘徊することです。北区中津にある「シカク」というミニコミショップで働いてもいます。いいお店なので遊びにきてネ!

    http://roujin.pico2culture.jp/