酒場街飲み路地裏探索

お店紹介ファイル
TOPお店紹介ファイルNo.008 僕の天国に一番近い場所。飲める釣り堀、武蔵野園
平日昼間の中年男性4人組。でも不審じゃないよ
お酒が好きな人ならば、誰しも一軒や二軒くらいは人を連れてきて自慢したい行きつけのお店、あるいはたまにしか行かないけれど思い出が詰まったお店、なんていうのを持っているもの。
インターネット上に数多ある匿名投稿の飲食店評価サイトから探すよりも、友人・知人にそんなお店を紹介してもらった方が、本当にいい店と高確率で出会え、楽しい時間を過ごせるのではないだろうか。ということで、今回は友人の友人が推薦してくれた、『飲める釣り堀』へと行ってきた。
まず最初に読者様への連絡事項になりますが、このサイトで記事を書いてくれるライターが最近2人増えました。
1人は『石神井公園の奇をてらわない焼き鳥屋 ゆたか』に登場したパリッコさん。音楽、イラスト、文章と、マルチな才能にあふれた売れっ子さんである。有名になりすぎる前に声を掛けてみました。

もう1人が、東京から大阪に最近引っ越したスズキナオさん。
彼もまたライターであり、『チミドロ』というバンドで活躍するミュージシャン。現在は『シカク』というミニコミやインディーズCDを扱うショップの店員もやっているので、お近くの方は声を掛けてみてください。大阪にはあまりいないキャラクターだと思います。

そして今回紹介する店は、そんな二人の共通の友達である『nakayoshi group』というバンドのgotoさんのお気に入りである、永福町にある『つり堀 武蔵野園』。天気のいい日に釣りをして、ちょっと飯を食べて飲むのだとか。
釣り堀でお酒を飲むという発想はなかったが、考えてみれば最高の組み合わせだ。最近は隠居老人みたいな生活に憧れつつある私の琴線にベタベタと激しく触れまくる。
ということで、桜の開花を目の前にした天気に恵まれた平日に、男4人でブラブラといってきた。
飲める釣り堀、武蔵野園
左からgotoさん、パリッコさん、ナオさん。ラーメン屋の行列問題について語っているところ。
飲める釣り堀、武蔵野園
待ち合わせ場所の永福町駅からはちょっと歩くということなので、コンビニで軽く酒を仕入れる。こういうブラブラした時間は、我が人生有数のブラブラだと思う訳ですよ。マイベストブラブラ。
飲める釣り堀、武蔵野園
知らない街を人に連れられて歩くという感覚が、なんだか子供に戻ったような気分だ。永福町の駅からgotoさんに連れられてフラフラと歩き、通り道にある神社で今日の酒宴の成功を祈る。

『平日+好天+缶ビール+おっさん4人』という組み合わせ。これが女性グループだと自然なのだが、おっさんだけだと急に怪しくなるのはなんでですかね。でもそんな若干浮いた空気も楽しみつつ、ちょっとした旅行気分を味わいながらのブラブラ散歩は、それだけでもう最高だ。
飲める釣り堀、武蔵野園
ソメイヨシノは開花前だったが、ジュウガツザクラという10月から3月まで咲いているというロングランな桜が満開だった。
飲める釣り堀、武蔵野園
「あ、ちくび祭りだ!」「しかも夜桜の神遊び!」「いやらしい!」と盛り上がるおっさんグループ。
これが「つり堀 武蔵野園」だ!
ちょっと鎌倉散策でもしているような雰囲気のある神社を抜けて、カラスが行水する河原やカワセミと出会える公園などの東京っぽくないスポットを抜けた先に、本日の目的地が見えてきた。
中に入ると、赤い帽子をかぶったおっちゃんが高校野球の中継を見ていた。
僕の考える最高の老後の一つがここにある。

そして壁にはたくさんのサイン。パリッコさんによると、あの『孤独のグルメ』のドラマ版にも登場した有名店らしい。そういえばポップコーンロボにも『モヤモヤさまぁ~ず』のシールが張られていたな。
それがミーハーなのでちょっと嬉しくもあり、記事にするには先を越されて悔しくもあり、という感じ。
昭和の食堂っぽいエリアを抜けると、そこは『呑兵衛が考えた天国』みたいな、独特すぎる空間が広がっていた。
全体がビニールで覆われていてほんのりと温かく、ビヤガーデンのように提灯が吊るされている。しかし、明らかにビアガーデンとは一線を画する実家っぽさがある、癒しとくつろぎの空間なのである。
狙って作った薄っぺらいレトロ空間ではなく、長年の結果としてなぜかこうなってしまった謎の多きカオス空間。
どうやら「酒」と「釣り」という二つの要素だけでなく、「珍スポット」という面でも楽しませてくれるようだ。
もう少し温かい時期になれば、このビニールがとれて、また別の印象を与えてくれるのだろう。
「バービーの水死体が!だからなんだっていう話ですけど……」と興奮するパリッコさん。 そしてこのビニールハウスの向こうにあるのが、最大の特徴である釣り堀である。 この釣り堀を見下ろすように配置されたテーブルが、中華料理屋からそのまんま引っ張ってきたみたいな感じで、浮いているけれど馴染んでいるという絶妙のバランスを保っている。 一人で来てここに座って、レモンサワーでも飲みながら、ぼーっと釣り人を眺めるのもいいだろう。 釣りをしている人に話しかけず、ただただ眺めるという空間は、最高のインスタレーションなのである。
飲める釣り堀、武蔵野園
店員さんが持ってきてくれた水も最高。
酒も料理も最高だ!
実はこの場所に辿りつくまでの長い道のりに、ここで釣りをするべきかどうかという熱い議論が4人の中であった。

僕とgotoさんが「せっかくだからやるでしょう。ここにきて竿を握らないでどうする!」と主張をすると、パリッコさんとナオさんは「そんなの考えてもみなかった!だってエサとか臭そうだし!」と真っ向から反論。世の中には、釣りをする人と、釣りをしない人がいるのである。

「結構釣れますよ。オレぜんぜんヘタクソですけど、1時間やったら2匹か3匹は釣れますから!」という案内役のgotoさんの話を聞いて、私としてはやる気まんまんである。

お互いの主張が平行線のまま武蔵野園にやってきたのだが、そこは私も大人である。いきなり別れて行動ではなく、まずはみんなで軽く一杯やって、そのあとにどうするかを各々が考えるという妥協点を見出した。とりあえずはやっぱり飲みたいし。

ということで、まずは一時休戦をして乾杯。
はやく俺も雑魚が釣りてえなあ。 純粋な居酒屋なんかに比べると、ある意味では観光地みたいな場所なので、料理の値段も味もそれほど期待していなかったのだが、これがどれも手ごろな値段で味もよかった。 うっかり釣りのことなど忘れて、この温かいビニールハウスで腰を据えて飲みたくなってしまう酒とつまみ。 やばい。これは釣りを後半にした我々の作戦負けか。
goto:「このラーメン、おいしいなぁ」

ナオ:「五本の指に入りますね!」

パリッコ:「五本の指に!ナオさん、けっこうラーメン好きじゃなかったでしたっけ?」

goto:「酒が飲みたくなるラーメンだね」

玉置:「シメではなく、つまみとしてのラーメンなんだ」

goto:「そしてなぜか酒がある!ははは、注文したからありますよね!」

パリッコ:「ちょっと一口いいですか。超うまい。ウッメー!」

玉置:「いやいや、ここのラーメンがそんなうまいわけないじゃないですか。どれどれ、ウメー!」

パリッコ:「そんな小芝居はいらないくらい、やけにうまいコレ!」

玉置:「胡椒がたっぷりかかっていてうまい!」

goto:「あはは、(胡椒をかけた)おれのおかげですよ」

パリッコ:「あ、自分の手柄にした!」

玉置:「このオムライスもうまいですよ。みて、この艶っぽさ」
飲める釣り堀、武蔵野園
gotoさんおすすめのオムライス(750円)は、なぜか中華スープ付き。
ナオ:「めっちゃうまいですね、これも」

パリッコ:「タマネギの焦げた感じがいい。絶妙!」

goto:「ザ・オムライスって感じがして、好きなんですよ。最近のオムライスはかわいいのが主流じゃないですか」

玉置:「カフェ的なね~。トロトロ卵にドミグラスとか掛けちゃたりして。ここは薄焼き卵にケチャップをドバドバ。今まで食べたオムライスで、一番味が濃い!酒だ、これは!あるいはライス追加!」
飲める釣り堀、武蔵野園
ツマミにもオカズにもなりそうなオムライス。
飲める釣り堀、武蔵野園
おかわりは缶チューハイ(250円)を頼んで、氷の残ったジョッキに入れちゃう。
飲める釣り堀、武蔵野園
パリパリの羽根がうれしい餃子(350円)。
パリッコ:「ところで酒の総合同人誌を作りたいなってナオさんと話していて。売上で宴会をしようというのが目標で、二人にも協力してもらえないかなーって」

goto:「酒の総合誌っていうのは?」

パリッコ:「今日みたいなこんな場所があったとか、路上で飲むときの注意点とか、そういう総合的な情報を……」

goto:「財布には紐をつけろとか、そういうことっすか?」
飲める釣り堀、武蔵野園
笑顔が人懐っこいgotoさん。「水の音を聞きながら飲むのがいいんですよ~」とのこと。完全に同意!
ナオ:「そういうハウツー的な要素を入れてね」

goto:「なるたけ郵便ポストがあるコンビニを探せとか?」

パリッコ:「そうそう、どのポストの高さがテーブルにいいかとか、そういうのを記事にしてね」

ナオ:「僕は渋谷で働いていたことがあるから、渋谷の高速の高架下での飲み方をガイドしたいな」

パリッコ:「上から目線だ。俺も池袋でどこが一人で落ち着いて飲めるのかを紹介したい。ここの壁のへこみのところが人に見つかりにくいとか」

玉置:「二人とも店じゃないんだ」

ナオ:「トイレが近いとかの情報を入れてね」
飲める釣り堀、武蔵野園
今後も大阪の居酒屋事情をこのサイトで発信してくれるであろうナオさん。
パリッコ:「そういう総合誌をつくりたいと。あとこういう飲み会にカメラを置いて、それをそのままネットで流したいなって。自分の飲みをアーカイブしていくみたいな」

ナオ:「そうですね。それをDVDにして本に付けるとかね!」

玉置:「その恥ずかしいDVDを付けて、誰が買うんですか……」

ナオ:「DVD付きって、なんだかいいじゃないですか!」

goto:「俺も昔、ちょっとライターみたいなことをやっていたんですけど、たまにネットとかで自分が書いたニュース記事とかがでてきて、恥ずかしくて悶絶するんですよ」

パリッコ:「恥ずかしいっすよねー」

goto:「でもそんな飲み会の動画なんて、恥ずかしいの極地じゃないですか!」

ナオ:「ははは」

パリッコ:「その恥ずかしさを超えて、老人になったときに、撮っておいてよかったなーってなるんですよ(真顔で)」
飲める釣り堀、武蔵野園
アサヒ芸能などでも連載をはじめたウレッコのパリッコさん。「京都の川床みたいだ!」と興奮気味。
玉置:「子供の成長記録みたいな、おじさんの飲酒記録。うわー」

パリッコ:「とりあえず、gotoさんにも絵をかいてもらえませんかねー」

goto:「いや描かない。やる気ない」

ナオ:「いやもう、ささっと描いてもらったやつでいいんで」

パリッコ:「あ、一番失礼なオファーだ」

玉置:「2、3分でいいんで!みたいな」

ナオ:「Tシャツにして売ったりしてね」

goto:「やる気ないなー」

パリッコ:「売り上げは全部宴会に還元します!」

goto:「昔の物交換の時代みたいに酒々交換だ。お礼は全部酒」

玉置:「いや、それは飲みきれないでしょ。初版1万部として、一冊1000円なら1000万ですよ!」

ナオ:「ははは、じゃあgotoさんに表紙を描いてもらえるっていうことで」

パリッコ:「一言も言ってないのに!」
やっぱり少しくらいは釣りもしましょうか
あまりの快適空間に、このまま閉店まで飲んでしまいそうになったが、せっかくだからとやっぱり釣りもすることにした。こう見えても私は釣りが大好きなんだよ。 時間は閉店までの1時間。竿を持つのはgotoさんと私だけで、パリッコさんとナオさんは、やっぱりいいやと店の人に断わって見学だけすることに。 「おまえらここまできて釣りをしないとは何事か!」とパワハラならぬツリハラをしそうになるが、それはホヤが食べられないという食わず嫌いに無理矢理すすめるようなもの。ここはバンバン釣って、釣りの楽しさを見せつけてやろうではないか。
……シーン。

私は月に2回くらいは船に乗るほどの釣り好きなので、釣り堀だったら簡単に釣れるに決まってるだろうと思ったのだが、これがびっくりするくらい釣れてくれない。雑魚が相手なのに。

さっきビニールハウスからぼんやりと眺めていた時は、そこそこの頻度で竿を曲げている姿が見られたのだが、いざ自分がやるとなると、うんともすんとも。

夕方に掛けて急激に気温が下がってきたために、魚の活性が下がってしまったのだろうか。我々のテンションも寒さと釣れなさで下がりまくりだ。やはり飲む前の気温の高い時間に釣りをするべきだったか。全部パリッコとナオが悪いな。
なかなか絶望的な状況なのだが、それでも一匹釣れないと気が収まらない。頼む、一匹だけでいいから!

さっさと帰ろうよというオーラを出しまくる3人と目を合わせないようにして、時間いっぱいまで粘る。そしてどうにか最後に釣れたのは、スレで掛かった(口以外のところにハリが刺さること)ヘラブナだった。

ヘラブナ釣りの世界では本来なら一匹とカウントされないスレ掛かりだが、今日という日を閉めるには相応しい幕切れかもしれない。

とかいって、この後もハシゴをしたんですけどね。
生きているからこそ辿りつけた僕の天国。

我が家からは片道二時間の旅となるが、誰かの還暦祝いの時にでも、また同じメンバーで集まれたらいいなあ。

ちなみにこの日の様子は、パリッコさんが「大衆酒場ベスト1000」に書いているので、そちらも視線が違っておもしろいですよ。
エリア:東京都
店名:つり掘 武蔵野園
形態:つり掘
営業時間:9:00~17:00
定休日:火曜日
住所:東京都杉並区大宮2-22-3 和田掘公園
アクセス:京王井の頭線永福町駅からのんびり歩いて30分
電話:03-3312-2723
  • 玉置豊

    玉置豊
  • 趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理の自称フリーライター。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。お酒は弱いんだけれど大好きというツンデレ体質。

    http://www.hyouhon.com/