酒場街飲み路地裏探索

お店紹介ファイル
TOPお店紹介ファイルNo.002 やきとんきく丸
お酒が好きな人ならば、誰しも一軒や二軒くらいは人を連れてきて自慢したい行きつけのお店、あるいはたまにしか行かないけれど思い出が詰まったお店、なんていうのを持っているもの。

インターネット上に数多ある匿名投稿の飲食店評価サイトから探すよりも、友人・知人にそんなお店を紹介してもらった方が、本当にいい店と高確率で出会え、楽しい時間を過ごせるのではないだろうか。

ということで、そんなお店を紹介していただき、どんどん応援していただこうというのがこの連載の趣旨である。
“日暮里・舎人ライナーで行く、ハードロックが似合う焼きとん屋”
記念すべき連載第一回は、日暮里・舎人ライナーの谷在家(やざいけ)駅が最寄りの、「やきとんきく丸 」である。まさか人生初となる日暮里・舎人ライナーが、焼きとん屋に行くためになるとは思わなかった。

一応説明すると、日暮里・舎人ライナーとは、日暮里駅から北に向かって舎人という場所まで走っている、お台場を走るゆりかもめの兄弟みたいな乗りものである。そんな路線があるよとは噂に聞いていたけれど、実物を見るのは今日が初めてだ。
お店紹介ファイルNo.002  やきとんきく丸
お台場っぽい日暮里・舎人ライナーの谷在家駅。でもバリバリの足立区。
この店に連れてきてくれたのは、見た目は闇金業者っぽいが、実はカメラマンとかCGデザイナーとかをやっているという噂のワタナベさん。私がよく見に行くバンドのライブで撮影をしている人だ。

店内には有線放送で80年代の洋楽が流れている。マドンナ、シンディーローパー、モトリー・クルー、デュラン・デュランなどの、私にとっては聴いたことがあるような、ないようなという、心地のいい音楽である。
玉置:「ワタナベさん、さっそくですが、この店のおすすめを教えてください。」

ワタナベ:「ここはヘビーメタル好きの店主がやっている焼きとん屋だね。ロックンロールじゃないよ、ヘビーメタルね。鋼鉄。メタルクイーンのもつ焼き屋!いいでしょ!肉がでかい!焼酎が多い!で、味のクオリティが高いのよ。そして俺みたいなロック好きが安心して飲めるっていうね。」

玉置:「ロックバーじゃなくて、ロック焼きとん屋って珍しいですね。舎人ライナーでしか来れないこの店を、地元でもないのに何で知ったんですか?」

ワタナベ:「高校時代から好きだったプロギタリストが、この店で弾くっていうのを聞いてね。」

玉置:「え、ここでライブするんですか?」

ワタナベ:「俺も本当かよって思って来たら、本当で。この距離で生演奏が聴けるんだよ。で、来てみたら店もいいんで、それ以来ちょくちょくね。ただちょっと難点があって、11時過ぎに行こうとすると、もう閉まっているんだよ。」

玉置:「それは来ようとする方が悪いと思います。」

玉置:「ところでこちらのメタルクイーンを、なんて呼べばいいんですかね?呼び方が定まらないと、なんとなく話しかけにくいんですよ。」

ワタナベ:「キヨミだからキヨちゃん!ああ見えて優しいんだよ!」

キヨミ:「なにがいいんだろ。ネット上は『おかみ』だけど、この辺の常連さんは『ママ』かな。キヨちゃんでもいいよ。キヨママって呼ぶ人もいるし。」

玉置:「なるほど、じゃあキヨミンで。いや、うそです。」
焼酎の量がちょっとおかしい
まず最初のドリンクオーダーは、私は紀州梅が入った梅スペシャルサワー、ワタナベさんはホッピーセットにしたのだが、このホッピーセットの『中』の量がおかしい。

これだけでワタナベさんがこの店を気に入っている理由が、よくわかった気がする。
お店紹介ファイルNo.002  やきとんきく丸
その焼酎、多くないですか?

ワタナベ:「ほら、ホッピーの焼酎の量が、どうかしているでしょ。」

キヨミ:「どうもしていません。うちはこうでーす。」

玉置:「それホッピー入らないじゃないですか。ハードロックだけに焼酎のロックだ。」

ワタナベ:「これを2杯も飲むと、まずダメになるよね。」

玉置:「ぼく、1杯でダメになれます、それ。」
お店紹介ファイルNo.002  やきとんきく丸
「普通はこれくらいでしょ?」とうれしそうに説明するワタナベさん。
手の込んでいる個性的なつまみの数々
玉置:「おすすめのつまみはなんですか?」

ワタナベ:「うーん、注文が面倒くさいんで、なにくれっていったことはなくて、俺が頼むのはポテサラと煮込みだけで、あとはお任せなんだよね。」

キヨミ:「はい、ポテサラ。」
お店紹介ファイルNo.002  やきとんきく丸
ここまで高さのあるポテサラって初めて見た。
玉置:「なんですか、この五重塔みたいなポテサラは。」

ワタナベ:「いいでしょ、これが酒のつまみになるんだ。」

玉置:「あ、胡椒がピリっと効いていますね。確かに酒のつまみになる大人のポテサラだ。これって自家製なんですか?」

キヨミ:「もちろん自家製でございます。はい、お次は煮込みをどうぞ。」

ワタナベ:「この煮込み。煮込みがうまい店に、悪い店はない。居酒屋の良心が現れるメニューだからね。」

玉置:「この煮込み、やばいですね。確かにいい店!」
ワタナベ:「キヨちゃん、中おかわり!」

玉置:「外じゃなくて中?あの焼酎の量で先に中がなくなるっておかしいですよね?」

ワタナベ:「あれ、おかしいかな。俺はホッピー一本で中を二回おかわりする計算なんだけど。」
お店紹介ファイルNo.002  やきとんきく丸
ホッピーが全然減っていないじゃないですか。
玉置:「ホッピーは色付け程度ですか。僕は外をおかわりして、だんだん薄くするタイプです。」

ワタナベ:「あんまり濃いから、この前お金を払うの忘れて帰っちゃって。舎人ライナーに乗ってプシューっとドアが閉まった時に携帯が鳴ってね。あやうく犯罪者になるところだったよ。」

キヨミ:「ナベちゃん、一番最初に来た時から、忘れ物していたよね?」

ワタナベ:「そうそう、機材をね。でも忘れ物は戻ってきたい証だから。潜在意識に訴える素晴らしい店っていうことで。今日はなにを忘れていこうかなー。」

玉置:「忘れられない店ならぬ、忘れ物をしたい店だ。」
仕込に時間が掛かっている焼きとんを味わう
キヨミ:「はい、焼きとん。ナンコツ、タン、ハラミ、カシラ。」

玉置:「これって全部豚ですか?」

キヨミ:「そう、焼きとんだから、うちは基本全部豚。ナンコツは豚の気道とか食道で、昔でいうドカン焼きね。」
お店紹介ファイルNo.002  やきとんきく丸
見事な茶色だ。
ワタナベ:「これが120円から140円。値段の割りに、なかなかの肉の大きさでしょ。」

キヨミ:「串にへばりついているようなお肉の大きさにしたくないから、大きくしちゃっているけれど、ものすごく儲けは悪いの。手間賃を考えたら、ほぼトントンかな。」

玉置:「豚だけにトントンだと(自慢げに)。」

キヨミ:「豚一頭分を仕入れて、全部自分で下処理からしているから、毎日4~6時間かかるの。」

ワタナベ:「この前、昼間にバイクで近くまで来たんだけど、店が開いていたから見てみたら、真っ昼間からもう仕込をしていた。キヨちゃん、真面目だなあ。」

玉置:「さすが足立区のキヨちゃん。ところで豚のハラミって珍しいですね。」

キヨミ:「ハラミって横隔膜なんだけど、豚の横隔膜は小さくて掃除も大変なので、単体で出す店は珍しんじゃないか。今日は2本しか取れなかったの。」

玉置:「そんな貴重部位でも140円ですか。」
懐かしい感じがする髪型の秘密に迫る!
玉置:「すみません、酔いが回ってきたところで大切な質問させてください。その髪型って……」

ワタナベ:「浜田麻里って知っている?あの人はものすごいヘビメタの歌い手で、彼女はずっと浜田麻里が大好きで、コピーバンドとかもやっているの。」

玉置:「え、浜田麻里ってヘビメタの人だったんですか。あのモダンチョキチョキズですよね?」

ワタナベ:「いや、そっちじゃない。『リターン~トゥ~マイセ~ルフ』って歌っている方。」

玉置:「おお!」

キヨミ:「地元の美容院に、浜田麻里の全盛期の写真を持って行って、『この頭がやりたから、この頭にして!』って。」
玉置:「あ、そうだ。せっかくだから、この記事を読んで来店した人に向けた、なにか合言葉サービスみたいなのを作ってもいいですか?キヨミさんに話しかけるきっかけに。」

ワタナベ:「合言葉をいったら、ホッピーの焼酎を多く注いでくれるとかね。」

玉置:「あれ以上?」

キヨミ:「じゃあ、合言葉は浜田麻里のモノマネで、『用意はいいかーい!』。いってくれたら焼酎を波々注いじゃうよー。」

ワタナベ:「それいいね。いきなり初めてきたお客さんが、カウンターで浜田麻里のモノマネで、『ホッピーセットの用意はいいかーい!』って。」

キヨミ:「今のライブだと、『用意はいいかなー?』なんだけどね!」

玉置:「勉強になります。」

キヨミ:「はい、ここからは鋼鉄関係(ヘビメタ関係の意)が送ってくれる北海道のつまみね。」

ワタナベ:「北海道といえばヘビメタが盛んな土地だからね!寒いところといえばヘビメタ!」
玉置:「ところでワタナベさんって、どこの国の人ですか?」

ワタナベ:「こう見えて日本語うまいでしょ。いや、日本人です。イギリスにいったら、ヒースロー空港で『お前はこっちに兄弟がいるのか?』って言われたけれど。」

玉置:「豚とか食べて、宗教的に大丈夫なんですか?無理しないで、ちゃんといってくださいね。」

ワタナベ:「いやインド人でもないです。敬虔な仏教徒だから。」
お店紹介ファイルNo.002  やきとんきく丸
甘味のある特大の豚ホルモンを使ったホルモン炒め。いくら噛んでも口の中でなかなか無くならないけれど柔らかいクニクニした歯ごたえがうまい。
素敵なお店でした!
舎人ライナーができる1年前にオープンして、なんやかんやがあってもうすぐ丸8年となるこのお店。そのアクセスの悪さは、ある意味でお台場っぽいかもしれない。

なかなかなにかのついでとかで来るような場所ではないので、この店のためだけに舎人ライナーに乗る必要があるのだが、それでも来たくなるフェロモン、いやホルモンがここにはある気がする。

新橋からゆりかもめに乗って行くお台場のオシャレなバーよりも、日暮里から舎人ライナーに乗ってロックな焼きとんを食べる方が、私には合っているようだ。
エリア:足立区
店名:やきとんきく丸
形態:居酒屋
営業時間:[月~土] 17:30~23:00(22:30ラストオーダー)定休日[日曜・祝日]
住所:東京都足立区谷在家3-20-1
アクセス:日暮里・舎人ライナー 谷在家駅下車徒歩1分
電話:03-3856-7091
合言葉:浜田麻里のモノマネで「用意はいいかーい!」といえば(似てなくてもいいです)、焼酎の量が多くなるはず!